2025/09/19 15:23

7月初旬から9月の半ばまで、エアコンの無い日トは、日中30度を上回る事もあるので、サマータイムとして夜の営業に切り替えている。夜営業に切り替わるからと生活のリズムは変わらず、朝はいつも通りの時間に起きて、簡単な朝食を済ませて子供たちを送り出した後に、殆どの時間をアトリエ(ギャラリー)で過ごす。掃除や周辺の草刈りや、新しい道具の開発や空間デザインの事など、外の気温や天気の変化に操られながら作業を進める。夕方になり周辺が山影に覆われる頃から夜営業の準備を始めて、ギャラリーを閉めたら一息ついて、庭で30秒だけ星や月、雲を眺めて家に戻る。
過ごしやすい季節よりも、天気や周りの動植物、虫たちの変化を無意識で気にしているように思う。朝鳴いている虫たちが静かになった頃に、全力で蝉が鳴き始める。雨が近づいてくると風が吹き、カエルが鳴いて、雨が降る。植物たちの緑色は、より濃くなる。雨が上がると、小さな虫たちが空を飛び、それを捕まえに早めに目覚めたトンボや燕が舞う。夜には聞き慣れない鳴き声が山から響き、蝉やカエルが少し鳴き、いつの間にか静かになり、朝が来る。
目にみえる小さな者や、聞こえる音は途方もなく無作為だけど、それらは予兆があって動いている。その1つ1つにストーリーが存在すると思うと、その奥行きは無限にある様にも思える。周囲数十メートルの範囲でどれほど多くの事が起きているのだろう。

それにしても今年の夏は去年よりも過ごしやすかった。猛暑と呼ばれる時期にカラッとした日が多かったせいかもしれないが、山麓地に住み続けて体が順応している事もあるかもしれない。


日トは夜の営業になるので、昼にできない事をしてみようとサマータイムの間に二つほどいつもと違うスタイルのギャラリーにしてみました。

一つは同じく山口市仁保で会員制の自然農園を営んでいる「イタヤマノウエン」さんを招いて夜に野菜を販売しつつ、ノウエンの事を詳しく聞ける場所をつくる、「野菜の夜」。最初は夜のマルシェ的な雰囲気を作ることが目的でしたが、イタヤマさんと話しているうちに、ノウエンの事をしっかり伝えられる時間になると良いな、とか、何か一緒に作れると楽しいだろうなという感情が浮かび上がってきて、カフェテーブルとマルシェテーブルを繋げて、自然に話が繋がる様なレイアウトにしておきました。結果的には来てくれた方々がイタヤマノウエンさんに興味を持たれている方だったので、自然と盛り上がっていました。
そして、せっかく一緒にやるならと、野菜の夜のタイミングに合わせて食事が大好きな私達と板山さんで、ピクルスを作ってみる事になりました。瓶のデザインは私達が作りましたが、板山夫婦が良い表情をするのでそのまま顔のスケッチ(作画:妻)がパッケージになりました。試食会は板山さんのキッチンを借りて、副菜として食べて見ましたが、原料の野菜が美味しい事もあって、それは美味しいピクルスが出来上がりました(※もう完売してるかもしれません)。
ピクルス瓶のデザインを一緒に眺めているうちに、色々な顔の人が浮かび上がり、イタヤマノウエンを取り巻く人たちの顔が登場するようなパッケージも面白いなぁと、妄想が膨らみました。板山さんも、デザインにはこんな力があるんですね。とそこから膨らむ妄想を楽しんでいました。
野菜の夜は、ちょうど近くの花火大会と重なってしまった事もあり、来客数こそ多くはありませんでしたが、とても意義のある夜になったと思います。


もう一つは、「読書の夜」。
最近、じっくり本を読む時間が欲しいなと思っていた事があり、ただただ本を読む時間をつくってみる事にしました。
特にこちらで仕切る事もなく、自分の本を持ってきて黙読してもらうだけの時間。こちらはその為の場所作りに専念しました。
予約制という事もあり、人数や到着時間に合わせて、全ての席が本に没頭できる場所になる様に配慮しました。必要最小限の光と周囲との物理的な距離感や視覚的な距離。事前にひと席ひと席に座ってみて、調整してみました。
オープン時間の4時間の中でちらほらと集まり、本を読み耽って、きりの良いタイミングで席を立ちお茶を注文して再び座る。本をめくる音と、とても小さな話声が聞こえる時間はこちらの想像力を掻き立てるものでした。
初めての試みでしたが、皆さんの満足そうな顔を見ると、そのうちまた。と思いました。ギャラリー内が少し暑かったように思うので、時期はずらすかもしれません。
それにしても、今年も良い夏でした。暑さが何か記憶に残るスパイスになっている様に思います。
そして、もうすぐ訪れる秋の日常が楽しみです。