2025/07/31 17:45

お会いした事がある方はご存知かもしれませんが、私たちは食事の時間がとても好きで、その為なら手間も時間もかけてご飯を作ります。いつからか、鉄やアルミのフライパンをメインに使うようになりました。テフロン製のものを買い替える事に違和感を感じ始めた事もありますが、それ以上に鉄製のフライパンで焼いた野菜や肉が美味しい事が大きな理由でした。
日トは、中心街から車で20分ちょっとの山麓地にあるのですが、近所に気軽に行けるような飲食店はなく、ほぼ100%自炊です。田舎暮らし特有かもしれませんが、自分達のできる事が生活の水準に直結しています。だから、できるだけ自分達の暮らしの能力を上げる手段を日々考えています。畑を耕している事も、井戸を設置したのもそんな事からでした。
暮らしの中で、毎日使う調理器具は私たちにとって重要です。中でもフライパンや鍋は殆ど毎日使うものなので、自分達のスタイルに合ったものを選んでいますが、片手フライパンだけはばっちりハマるものが無く、いつかは作りたいとデザインの妄想だけは数年前から進めていました。
今年の初旬に良い縁があり、燕三条で創業150年の鍛治屋さんと話す機会があり、フライパンを制作できるという話をいただき、今まで溜め込んでいた条件や構想を基に図面を引いて、鍛造で試作していただく事になりました。

私が考える良いフライパンとは、美味しく焼けて、食卓にも馴染み、洗いやすく、長く使える事です。
道具として当然の事かもしれませんが、それらを普段の暮らしに置き換えていく事で必然的に形が見えて来ました。
鉄のフライパンは、アルミやテフロンのものと比べると比重が重い分、同じ形状でも重くなってきます。その代わり蓄熱性が高かったり、熱が均一に広がりやすかったりします。日トのフライパンは2.3mmと通常流通しているものよりも厚みがあるもので、蓄熱性が高く、様々な食材が香ばしく焼きやすい厚みです。この厚みに対して、重量とコンロ上での振り回しのバランスを考えて、φ24cmというサイズに決まりました。
それに付随して焼き面の大きさや高さが決まってくるのですが、焼き面は目玉焼きが2個、ステーキが1枚、鶏ももなら丸々1枚、トーストなら1枚と、焼きやすいサイズの175mm程度に設定して、そこから緩やかなカーブで側面に繋がる様にしました。若干浅めに設定したフライパンの深さは、側面の緩やかなカーブとも相性が良く、スプーンで油をかけながら焼く(アロゼ)のが容易で、引っ掛かりが少なく洗い易い形となりました。
取手は少し短く、低い位置に取り付けているのは、調理中に邪魔になりにくい事、食卓に並んだ時に他の器と馴染むこと、収納時にも柄が短い方が良いことを条件に形にしています。根本が細く、持ち手の辺りを平たくしているのは、取手の重心を中心に近づける事と、手持ち部分を掴みやすいサイズにする事、極力熱を受ける面積を減らす事からです。
そして、鍛造(鉄を叩いて成形する方法)での制作には無数のハンマー跡が残ります。手業によるその風合いはどこか温もりの様なものがあり、食卓に並んだ際にも柔らかい雰囲気を見せてくれます。
フライパンは主にコンロの上で活躍する調理器具ですが、食卓でも使用できると、暮らしの幅が広がります。使い続けることで馴染み、育つ、鉄製フライパン。日々の食事の時間を良いものにしてくれる事を願っています。
鉄製フライパンを使った事の無い方へ。
使い慣れるとメンテナンスは簡単です。日々洗って元の状態に戻すのではなく、使うほどに自分に馴染んでくる道具と考えて、育ててみてください。使い方など、基本的な事を下記に記載いたします。


【鉄製フライパンの基本的な使い方】
[使用開始]
・油ならし済みの為、軽く洗っていただければすぐに使用できます。
[調理]
・水気を切り、フライパンをよく熱してください(フライパンから薄煙が出る程度か、水滴を落として玉状になる程度)。熱したフライパンに油を入れて、油がサラサラになる程度まで熱し、中火〜弱火にして食材を入れて調理を始めるとくっつきにくくなります。
[使用後]
・フライパンが温かいうちにぬるま湯でたわしを使って洗う。(基本的に洗剤は不要ですが、どうしても取れない汚れがついた場合はお湯を入れて火にかけて焦げつきをふやかして洗ってください。)
・洗った後は水を拭き取り、必ず火にかけて水気を飛ばして湿気の少ない場所に保管してください。
・2、3回に一回ほど使用後に油を薄く塗っておくと殆ど錆は発生しません。

さらに詳しい使い方などは同梱する説明書に記載していますが、基本的な使い方はこの程度です。

※熱源は、直火(ガス)・オーブン・IH

【日トのフライパンで作った料理】
・焼き野菜とディルとパン・目玉焼とパン・焼き茄子・ヒレステーキとにんにく・鶏もも肉とニンニクとローズマリー・チーズトースト・目玉焼とソーセージ・焼き餃子
普段から鉄製フライパンを使っているので慣れてはいましたが、1ヶ月ほど使ってみると、食材を入れるタイミングだったり、火加減などが分かってきて、使い始めよりも良く焼けるようになりました。

因みに日トの鉄製フライパンは専用のトートバッグに入れてお渡ししますので、このトートバッグで持って帰っていただけます。
この話が、鉄製のフライパンで迷っている方の参考になると嬉しいです。


日トの鉄製フライパン24cmの販売ページへのリンク
https://hitogallery.theshop.jp/items/110993859