2025/05/27 17:59
2025年5月24日〜6月2日の青木宏展の空間構成について。(オンラインは6月4日まで 下部にURLがあります)
青木宏の作品は一貫して「土の種子」というテーマ作陶されています。

土との対話の中で生み出す制作時間をも作品に昇華しているという話を伺い、日トで個展の開催が決まった時から、朧げに「時間」を主軸に構成していくのが良いのでは無いかと思い、脳内でいくつかの大まかな配置や照明計画、朝〜昼〜夜と最も光の影響を受ける配置をシュミレーションしていました。
(スケッチは当初考えていたレイアウト)

当初はいくつかのエリアに低い台を用意して、窓からの自然光や周囲の季節の色を受ける形で設置する事を考えていたけど、青木さんと何度かやりとりする間に、もっと土(地面)に近い形で見れる方がより作品の概念が伝わるのでは無いかと考えるようになりました。

企画展や通常の展示の場合は、家庭に持ち帰った時に良いイメージが想像しやすい事と、作品や製品自体の魅力が伝わりやすいようにバランスを考慮して空間を構成していく事が常で、日トで見た時の作品の記憶ごと持ち帰ってもらえるように考えています。

ただ、今回の青木宏の個展に関しては、持ち帰った時のイメージという項目のバランスをとらない方向で考えることにしました。
それは、全ての作品が手元に届いた日。大きさや重量を測っていると、全ての形状や大きが違っていて、彼がどう考えて一点一点制作しているのかがわからなくなり、何か制作意図とは別のニュアンスが入っている様な気がしてきて、半分は自分の考えの及ばない部分を取り入れられないかと当初の考えを改める事にしたからです。
というのも、事前に伺っていた青木さんの作品に対する志しからの影響も大きく、土の種子・時間・土との対話、に対して、時間の変化を「作品達」に対して見せる事ができれば、彼らの魅力が伝わる様な感覚が私自身の中で濃くなっていったからです。
青木さんの話しを聞いていると、土で作っているものというよりも地面から生まれ出てきた何か。という印象の方が強くなり、生きているモノとして捉える事で、彼らの目線に立つことができ、「配置」を「関係」と置き換える事で、青木さんの生み出している土の種子達を生きた形で表現できるような気がしたからです。

結果として、一つ一つの作品としっかりと向き合って、相応しい位置に配置していくというシンプルな方法になりましたが、個々の作品が持つ領域の様なものが見えてきて、作品同士の関係性から徐々に配置が見えてきました。

「殆どの作品を直に床に設置するという方法で行きたい」と青木さんに伝えると、「それは作品の質が問われる事になりますね」と瞬時に理解してくださって、床設置をOKしてくださいました(青木さん、ありがとうございます)。
床に設置することで、上から見下ろすことになる作品。地面から生まれ出た様な感覚の表現に至ったと思います。
作品自体をさまざまな角度から見るには、しゃがんだり、遠くから見たりと一手間かかりますが、日トに足を運んでくれて方々は、それを楽しみながら紐解いていく姿を見て、ほっとしました。




ランダムに床に設置してある作品は、朝〜昼〜夜と光の影響で大きく変化して様々な表情を見せてくれました。
作品に引っ張られる形で展示空間を作り上げていく作業は、とても根気のいるものでしたが、何かを掘り当てるような充実した時間でした。
そして、その時間が作品を徐々に理解していく過程だった事き気がついたのは、設置が終わり少し経った頃でした。

徐々に染み込んでいく感覚は、草木をじっと見つめるそれと似たものがありました。
展示は2025年6月2日まで日ト ギャラリーにて行っています。近くにお越しの際は是非お立ち寄りください。
※5/27 20時〜 6/4 20時 オンライン販売URL
https://hitogallery.theshop.jp/categories/6629133
