2025/03/10 15:10

2023年から始まった山口市の仁保地域全体で行う蚤の市。(2025年3月20日に第五回目を開催予定)

「地域で」というのは同じ日に地域内のさまざまな場所で、ガレージセール的に古いものや不要になって誰かに譲りたいものなどを自宅の軒先や各公民館に集まって行う事からついた言葉です。

発端は道の駅仁保の郷の横にある交流センターが主体で「仁保さとらぼ」、という農のある暮らしや地域お越し、空き家活用などについての幾つかの研究会が作られており、私自身も東京からUターンでこの地に移住した事もあり、空き家活用の会に顔を出してみた事からでした。
交流センターの所長さんが研究熱心な方で、様々な資料の配布と共に地域を動かす為にはまず文化を作るのが近道という話をお聞きし、皆さんで色々とアイデアを出していく中で、道路沿いの様々な家で、古い家具や小物、使わなくなった農具なんかが並ぶ光景が頭に浮かんできました。
必要な人に必要なモノが継がれていく事が習慣としてこの町に根付けば、空き家も誰かが引き継ぐ事が当たり前になって、人や情報が流れていくのでは無いかと想像できました。ただ、地域的な特徴として高齢者の方が多く、物理的に力が衰えている事は否めなく、大きな家具を動かしたり、出店の為に大きな労力を使う事はハードルが高く文化として根付きにくい事も同時に想像できました。
そこで、各家庭や集会所など開催できる場所で蚤の市を開き、開かれている場所をSNSやメイン会場で伝えて周遊してもらうという方法に至りました。開催日時の周知に関しても参加される方々が個別にSNS(主にインスタグラム)で周知するという方法に自然と落ち着いてきています。

これは個々のアイデアというよりは、所長さんからの事前情報や、その時に集まっているメンバーや地域性が重なって生まれてくるものであって、地域状況から生まれ出た発想だと思います。

蚤の市は参加してくれる方全員に、蚤の市の情報が入った黄色い手拭いが配布されて、軒下や会場周辺に掲げます。
設置型の旗や看板を作らなかったのは、事前に準備する労力をできるだけかけない事と、手拭いであれば捨てられる事も無く、何かに使用してもらえると考えたからです。ちなみに黄色に黒という配色は周りの景色が田んぼや山の緑の中で、分かりやすいという理由のみで決めています。
初回から比べると、徐々に参加者も増えて場所によって様々な特徴があって面白いです。器が多い場所や、古書や着物や布、新鮮な野菜や、農機具があるところ。紫蘇ジュースや焼き芋を振る舞っているところをなど、集落や集まる人々によって個性が出てきています。本当の意味で何が出てくるかわからない部分も冒険心をくすぐられます。個人的にはそのうち空き家に値札が貼られていたりすると面白いなぁとか期待しています。
何より、楽しそうな笑い声や活気があるシーンには変え難いものがあります。顔を合わせる事や会話が続く事で、空き家を含めた地域の情報が流れやすくなっている様に思えます。

仁保地区以外からも、多くの方が訪れるようになった蚤の市。
同じ地域内でも周遊する事で今まで足を運ばなかった場所に行き着いたり、良い景色に偶然巡り会えたり、遠くから来てくれた方が伝えてくれる言葉からもこの地の魅力を再認識できます。
こんなささやかな蚤の市から、古いものを循環させる事が文化として根付いた町になる事を願います。