2025/03/04 16:20
大阪の吹きガラス集団 fresco さんに吹いていただいている、高台付きのガラスの器。透過した光の具合から日トでは涼器と呼んでいます。frescoさんの事を知ったのはもう10年以上も前で、吉祥寺の雑貨店で見た小ぶりなグラスがきっかけでした。水や水を透過した光の様な印象が残る作品に興味を惹かれ、個人的にも、空間デザインの一旦としても関わっていただいた事がありました。
代表の辻野剛さんから聞いたガラスに対しての想いや、仕事への姿勢は今でも自分の中に存在していて、ガラス質のもののデザインをする時には工房での記憶を鮮明に思い出します。
私たちの住む場所は山麓地にある為、夏の間もよっぽど気温が上がらない限りはエアコンを点けず、汗をかきながら時折吹く風や扇風機、冷たい飲み物で乗り切るのですが、近所を流れている小川の清涼感、夜は鈴虫の音色など「見立て」で涼しい気持ちになることもしばしばあって、夏の食卓にもそんな清涼感が流れると良いなと思っていました。
そんな清涼感を食卓にと、形になったのが涼器と呼んでいる高台付きのガラスの器です。
当初、私の書いたスケッチを元にfrescoの辻野さんに相談した際に、製作工程や技術的な事の打ち合わせを何度かさせていただき、試作〜製品化に至ったのですが、こちらのデザイン意図を汲みながら技術的な見解や形状的な美しさを保つ為にはどうするかなど、改めて人の手で作る事の価値や面白さを実感しました。
職人でありながら芸術を理解している人に使われる言葉「アルチザン」を連想させられる瞬間でもありました。


この涼器と名付けたガラスの器は、透過した光や景色の映り方に主眼を置いていて、高台をつけることで光の透過距離を作りテーブルに光の屈折が落ちる様になっています。※上の写真は陽射しを使っての撮影。自然光や指向性のあるLEDの光環境で模様が見えてきます。
器は2型デザインがあり、夫婦(めおと)の器としても使用できます。

金属型を使って形成された凹凸のディテール。形を使って形成された胴部分と別で形成した高台を、ガラスまだ熱い状態で回しながら芯を狙ってくっつけるそうです。高度な技術を要する、まさに職人技。

下の写真は去年の夏に素麺を食べたくなり、どうせならと撮影したものです。
中央下の胡瓜の和物が入っている小さなグラスがその昔、吉祥寺で初めて見たfrescoさんの作品。今は廃盤になり製作されていませんが、このテクスチャーが美しかった為、日トでは同じ金属型を使って涼器を生産していただいています。
ちなみに素麺をまっすぐ盛る為に、最初に束の先を少し濡らして固めた後に茹でて、最後に先の部分をカットしてます。固まった先の部分はもう少し茹でて、麺つゆで食べるともちもちとして美味しいです。

他にもキャロットラペや、コーヒーゼリー、アイスクリームなんかにも良く似合う器です。


